基調講演「第2言語の文構造の獲得--日本語学習者の文理解のメカニズム」報告
- 講演者:玉岡賀津雄(名古屋大学大学院・国際言語文化研究科)
- 8月7日(日)10:00-11:20
- 201教室・202教室
- 報告者:司会 石川有香(名古屋工業大学)
同時中継を用いた本年度の基調講演は、2室の大教室に集った100名以上の聴衆を大いに魅了し、講演時間終了後も、会場には、講師への長い列ができた。玉岡氏は心理言語学を専門とし、本講演では、さまざまな行動実験の結果から、同じ母語(中国語)を持つ日本語上級学習者の間でも、異なる文処理方略が用いられている可能性があることを示した。
日本語はSOV言語であるが、英語はSVO言語となるため、日本人英語学習者にとっては、語順が重要な学習項目のひとつとなっている。翻って、世界の言語を見渡してみると、SOV言語は決して特殊な言語ではなく、むしろ、「主流派」となる。世界には、さまざまな語順が存在するばかりか、あたかも語順が定められていないかのように思える言語すら存在するわけだが、階層構造仮説は、どのような言語においても、「基底」となる正順語順が存在すると考える。
心理言語学の観点から、文処理の速度や眼球運動に関する調査を行った結果、日本語においても正順語順が存在すること、日本語母語話者による正順語順の決定には、意味役割ではなく、文法情報、特に、文法機能が大きな役割を果たしていること、しかしながら、中国語を母語とする日本語上級学習者の場合は、文法機能を手掛かりとしている場合と、格助詞を手掛かりとしている場合があることなど、氏の一連の研究の中では、さまざまな日本語の文処理の過程が明らかにされている。
心理言語学での正順語順の捉え方、実験の方法やデータの処理方法などについては、具体例を交えた丁寧な説明があり、最先端の研究の紹介も、非常にわかりやすいものであった。講演が進むにつれて、個々の実験結果から徐々にモデルが組み立てられてゆく様に、会場は、まるで推理小説の謎解きが行われているかのような興奮に包まれた。
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