講師
今井 隆夫 愛知みずほ大学
概要
本講演では、「感覚英文法」に基づく授業実践の例について理論も交えながらお話しします。「感覚英文法」とは、普通の感覚を持つ人なら、すんなり納得できるものであり、大概、英語の母語話者からも賛同を得られるという性質のコミュニケーション力向上につながる文法概念の記述方法のことである。それは、認知言語学の言語観と大変相性が良いものである。また、認知言語学の道具立てと相性のよい教授・学習方法は、英語教育の現場やGood Language Learners(外国語学習に成功している人)といわれる方々の学習方法の中にも見られるものでもある。
具体的には、(1)「文法」=「言語知識」という動的用法基盤モデルを参照した文法観を基本概念、(2)言語表現は、恣意的(arbitrary)な面があるもののかなり多くの部分は、動機づけられている(motivated)と言われる。つまり、なぜそのような表現になるのかの説明がされるのである点、(3)部分的な動機づけを与えることの英語学習支援における有用性、(4)コミュニケーション力向上につながる文法学習、を中心に、実際の授業での実践例を中心に紹介したいと思います。
形(form)と意味(meaning)の対応関係(symbolic structure)を重視し、例えば次のようなクイズにより、言語の部分的動機づけと日英語の認知様式の違いに目を向けさせています。
(a) Obama has visited Princeton.とは言えるが、Einstein has visited Princeton.という文がawkwardなのはなぜ?
(b) I love the music in the waiting room.とI’m loving the music in the waiting room.の意味の違いは?
(c) take care ofを使って文を作ると?
(d) I don’t like shelf. I‘d rather eat table. (Langacker)という発話はどのようなTPOなら可能か?
今回の講演では、60分という時間枠の中で、「コミュニケーション力向上のための感覚英文法」の一部を紹介します。2010年時点での記録は、今井隆夫(2010)『イメージで捉える感覚英文法:認知文法を参照した英語学習法』(開拓社)を参照いただければと思います。